池谷裕二、糸井重里『海馬 脳は疲れない』


池谷裕二糸井重里『海馬 脳は疲れない』(新潮文庫/620円)読了

海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

池谷氏は新進気鋭の脳科学者。この本は「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載されていたものをまとめたもの。
以前に読んだ池谷裕二氏の「進化しすぎた脳」に比べると、若干わかりやすいかな? と思えるのは、糸井重里氏が巧く引き出しているせいもあると思う(若干、糸井氏のトークが煩わしく思える時もありましたが)。


数多くのエピソードの中から、特に印象に残ったことを列記すると、

  • 年をとると頭が悪くなるというふうに思いこんできたけれども、あらゆる発見やクリエイティブのもとである「あるものとあるものとのあいだにつながりを感じる能力」は30歳を超えた時から飛躍的に伸びる。
  • 仕事を長時間続けていると、頭がボーっとして頭が疲れたと思える時があるけれど、疲れているのは目や肩、首筋だけであって、実際には脳はまったく疲れることはない。
  • やり始めないとやる気は出ない。


特に最後の「やり始めないとやる気は出ない」というのは、私の職業にも関係することもあって、早速職場でも紹介しようと思っているのです。職業柄、「やる気を出すにはどうしたらいいのか?」とか、「勉強しなくちゃ行けないのはわかっているんだけど、なかなかやる気が出ない」、といった質問を受けることが多いのですが、この「やる気」*1について、池谷氏はこう言ってます。(以下引用)

ところが側坐核神経細胞はやっかいなことに、なかなか活動してくれないのです。どうすれば活動を始めるかというと、ある程度の刺激が来た時だけです。つまり「刺激が与えられるとさらに活動してくれる」ということでして・・・・やる気がない場合でもやり始めるしかない、ということなんですね。そのかわり、一度やり始めると、側坐核が自己興奮してきて、集中力が高まって気分が乗ってくる。だから、「やる気がないなぁと思っても、実際にやり始めてみるしかない」のです。

このエピソードを聞いて思い出したのは、自分が大学受験をした時のこと。
やる気がない自分を起動させるために、受験勉強の最初の15分は、とりあえず英単語と漢字の書き取りをひたすらやり続けてみたものでした。そうしているうちに脳が勉強モードになっていって、本格的な勉強に切り替えていたのです。あの頃大脳生理学なんて、まったくわかっていなかったのですが実践していたというわけです。

池谷氏は高校生向けに勉強方法や記憶力をよくする方法などを紹介する著書も書いているようなので、次はこのあたりを読んでみることにします。

*1:「やる気」を生みだすのは、脳のほぼ真ん中にある「側坐核」というところなのだそうだ。